一般財団法人同友会 藤沢湘南台病院 様

「データドリブンな地域医療連携活動」で地域の核となる病院へ

今回は、神奈川県藤沢市にある藤沢湘南台病院様にお話を伺いました。藤沢湘南台病院様は2021年11月にforo CRMをご導入いただき、前方連携・後方連携においてforo CRMを活用されています。

藤沢湘南台病院様がどのような地域医療連携活動をしているかについて、院長の熊切 寛先生(写真の右から2人目)、副院長の鈴木 紳祐先生(写真の左から2人目)、患者総合支援センター長の藤井 真先生(写真の右端)、地域医療連携室長の露木 隆様(写真の左端)にお話しを伺いました。

【背景】なぜ、地域医療連携に力を入れているのか?

まず、貴院の特徴を教えていただけますでしょうか。

熊切院長:藤沢湘南台病院は昭和7年に設立された病院で、創立90周年を迎えました。創立当時から地域に根差した医療を続けていて、徐々に大きい病院になっていきました。現在、急性期一般病棟、回復期リハビリ病棟、緩和ケア病棟など、病床数は330床となっています。また、病気の予防、健康増進につなげるライフメディカル健診プラザや、介護老人保健施設である藤沢ケアセンターを併設していまして、地域の様々なニーズに応えられるようにしていることが藤沢湘南台病院の大きな特徴です。地域に根差した医療を提供し続けるためにも地域医療連携に力を入れなければと考えており、当院では最重要課題として捉えています。


図1:藤沢湘南台病院様 施設概要

貴院よりも施設規模の大きい病院に囲まれているという特徴がありますが、どのように意識されていますか?

熊切院長:近隣の病院の方も同じことを言うかと思いますが、競合という意味ではそこまで意識したことはありません。最も大事なのは、患者さんがこの地域で適切な医療を受けられる体制が整っているかどうかだと思います。当院は多様な種類の病棟や施設があり、「藤沢湘南台病院なら何とかしてくれる」と思ってもらえるような病院であることが特徴ですが、近隣の各病院にもそれぞれの特徴や個性があります。地域の患者さんに最適な医療サービスを提供できるよう、意識し合っていければと思っています。

【導入前】当時抱えていた課題は何だったのか?

2021年11月にforo CRMを導入いただきましたが、当時どのような課題をお持ちだったのか教えていただけますでしょうか?

熊切院長:医療機関別の紹介数の増減が見える化できていませんでした。「この医療機関は紹介数が伸びてそう」「ここは減ってそう」といった感じで、それが本当に正しいのか分かりませんでした。どこに課題があるのかはっきりしないから、データがあっても実際の活動には生かせない。地域医療連携室で独自のシステムを作って、スタッフも何とかしようと頑張ってくれましたが、マンパワーが足りず分析しきれない状態が長年続いていました。

露木様:当時は、いかに紹介を断らないで地域の医療機関との関係性を悪くしないかに業務の8割を割いていました。院内調整がメインの仕事になっていて、データ分析や当院の認知を高めるための活動などには、あまり時間を割けない状態でした。

鈴木副院長:地域に根差した医療を提供している”つもり”になっているのではないかと感じていました。実際に、近くのクリニックでも紹介を1件もいただいていない場合がありました。そういった現実を客観視しなければいけないと感じていました。

【導入後】どのようにして課題を解決していったのか?

まず、foro CRMの導入を決めた理由を教えていただけますでしょうか?

鈴木副院長:行動に対して振り返りを行えて、データで客観的に結果を評価することが可能なサービスであることです。私が課題に思っていたことを解決できるツールだと思いました。地域医療連携システムに関してはいくつか調べましたが、前方連携活動に特化したツールは他にはありませんでした。

露木様:ただ、地域医療連携室としては業務が増えることについては、かなり不安がありました。地域医療連携室のメンバーにどう説明しようかと。導入が決まって準備を進めている期間も、正直言って「本当に大丈夫なのかな?」と疑っていました。実際に運用が始まってみたら、医師と事務スタッフが一丸となって取り組めていまして、連携室の業務量はそれほど増えませんでした。

鈴木副院長:導入の決め手でもありましたが、担当者が専任でサポートしていただけるのはすごい助かっています。フォローしていただかないと院内定着が難しいので。実務面でもサポートいただいていて、それが業務量が思ったよりも増えなかったことにつながっていると思います。

藤井先生:新型コロナウイルスなど、病院を取り巻く環境に大きな変化が起こっています。個人的な感覚ではありますが、時代のニーズに適応できる病院とそうでない病院の二分化が進んでいくと考えています。DXが毎日のように話題に挙がっていますが、変革していかないと取り残されていくのではないかと危機感を持っています。職員の意識も変えるきっかけになるので、どんどん必要なツールは取り入れていく方針です。foro CRMもDXの一環として導入を決めたとも言えます。

 foro CRMを導入したことで、どんな効果を実感いただけましたか?

熊切院長:当初の課題だった「マンパワーが足りず分析しきれない状態」は100%クリアできたと思っています。foro CRMを開けば、全体的な紹介数の傾向や個別の医療機関の紹介数の推移などは見たいときに見れるので。


図2:各医療機関の【紹介数/入院数/手術数】の推移が確認可能(foro CRMデモ画面)

藤井先生:職員の意識変革にもなっています。地域医療連携に対してやらなきゃいけないという空気が、院内全体で浸透し始めています。地域の医療を守ることは地域医療連携室だけの仕事ではないので、とても良い傾向だと思います。

鈴木副院長:foro CRMを導入してから以前よりも患者さんを紹介していただけるようになったクリニックがありまして、すごく面白いエピソードがあるんです。1回目に訪問する前にクリニックのWebサイトを拝見して、院長先生の好きな食べ物が掲載されていたので手土産を持って訪問しました。その時は特に何事もなく終わりました。少し時間が経った頃に2回目の訪問をしようと思いまして、改めてクリニックのWebサイトを確認しました。そしたら、院長先生の好きな食べ物が「〇〇は好きだが、××は嫌い」と更新されていることに気づきました。それで前回の訪問メモをforo CRMで確認したら、××を手土産として持って行ったのは自分だと気づきました。2回目は好きだと書いてあったものを手土産に持って行ったところ、結果的に多くの患者さんを任せていただける関係になりました。このエピソードは余談かもしれませんが、訪問する前の事前準備で前回の課題をクリアできたことが、関係性の強化につながったと感じています。こういった成功体験をどんどん増やして、より多くの患者さんを任せていただけるような活動をしていきたいと思っています。

露木様:私も同じようなエピソードがありまして、訪問してすぐにご紹介を2件いただいたことがあります。foro CRMでは訪問後の効果測定がすぐに見えるので、一緒に訪問した担当者もすごく喜んでいて、それを見て私も同じくらい嬉しい気持ちになりました。もちろん良い結果になることばかりではありませんので、活動をきちんと振り返ってマネジメントしていきたいと思います。

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図3:個別効果検証機能で訪問後の紹介数増減が確認可能(foro CRMデモ画面)

様々なシーンでforo CRMをご活用いただいていますが、例えばどんな活用をされていますでしょうか?

鈴木副院長:町を歩いているときにもforo CRMを使っています。そのエリアでの紹介状況はどうなのかを、foro CRMを見て確認することに使っています。実際に紹介が無いエリアのクリニックに訪問すると、当院のことをあまり認知されていなくて「意外に近くにあるんですね」と言われることもありました。そのようなエリアには看板広告を出してみたりするなど、foro CRMに蓄積されているデータを様々な場面で活用しています。


図4:営業分析マップ(foro CRMデモ画面)

【今後の展望】今後は何を目指していくのか?

foro CRMについて、次に期待していることはございますか?

藤井先生:法人全体でforo CRMを使って何ができるのかについて検討したいと思っています。現在は急性期の領域においてforo CRMを活用していますが、当院は一般回復期リハビリ病棟、緩和ケア病棟など様々な種類の病棟がありますし、法人全体では他にも様々な施設があります。前方連携活動の領域にとどまらずforo CRMを活用できればと考えているので、今後の機能拡張に期待しています。

熊切院長:現在はここにいるメンバーが主にforo CRMを使っていますが、病院全体で地域医療連携を進めていくためには、少なくとも各診療科の部長クラスはforo CRMが活用できるように環境を整えたいと思っています。院内全体で活用するにあたって、より一層のサポートを期待しています。

最後に、地域医療連携を推進してどのような未来を実現したいかを教えてください。

熊切院長:患者さんを守る、地域の医療を守ることが一番大事です。紹介・逆紹介をもっと簡単にできるようにして、藤沢湘南台病院が地域医療の核となっている未来を実現したいと思っています。紹介、逆紹介ともに解決すべき課題はまだまだありますが、地域医療連携を当院の最重要課題として引き続き取り組んでいきたいと思っています。