医師会病院として前方連携を進めるために『foro CRM』をフル活用

1984年に開院した宮崎市郡医師会病院様は、宮崎市や国富町、綾町からなる「宮崎東諸県医療圏」を担う基幹病院として、急性期 疾患を中心とした医療を提供し続けています。医師会の会員である地域のクリニック・病院とのかかわりが深い事業形態ではあるものの、なかなか活発に前方連携に乗り出せなかった事情があったそうです。その中で『foro CRM』を導入したことにより、どのような変化がもたらされたのか、詳しく伺ってみました。
地域のクリニックとの関係性から、長く続いた「営業に躊躇してしまう時代」
――宮崎市郡医師会病院の概要を教えてください。
開院して約40年間、宮崎東諸県医療圏において主に急性期疾患に対する医療を提供してまいりました。1997年には地域災害拠点病院、翌98年には地域医療支援病院となり、医師会員が利用する共同利用型病院として地域にとって欠かせない病院を目指してきました。
“医師会”病院の最大の特徴は、「共同利用施設・開放型病院」として、会員の先生と一緒に地域の患者さんを診ているところにあります。会員の先生が患者さんに専門的な高度な医療を提供する必要があると判断されたとき、当院をご紹介いただくというのが基本な流れです。だからこそ、会員の先生方との関係性も非常に深いものとなっています。分娩出産を例にあげると、地域の産婦人科医が当院の設備を利用しながら、当院の医師や看護師等のスタッフと共同診療されている姿をよく見かけます。
――前方連携における課題はどのようなものがありましたか?
会員との連携が重要なことから、2002年には地域医療連携室を設置していましたが、当時はご紹介いただいた患者さんの入退院の連絡をする程度の役割しかありませんでした。診療報酬等の改定を受け、2016年には後方支援の一環として退院支援を開始するとともに、2018年には前方支援の一環として入院支援がスタート。ただ、会員との関係性構築に関しては、お世辞にも活発だったとは言えず、年3回発行する医療機関向けの広報誌をお届けする程度に留まっていました。
実は戦略的に営業・マーケティングを進めたいと思っても、できない事情が存在していました。当院の性格上、地域の医療機関も大切なパートナーとなります。自分たちが営業活動を展開することで、地域医療機関の患者さんを奪ってしまうかもしれないと、なかなか行動に移せずにいました。しかし、そのせいで会員の先生に新しい治療内容等の最新情報を伝え切れておらず、せっかく新しい施設・設備や取り組みを導入しても、「知らないから利用しなかった」という事態も生じていました。
――2019年からはようやく、会員医療機関の訪問を開始したそうですね。
積極的に外に打って出ようとなった要因の一つに緩和ケア病棟の存在があります。病棟休止等を経て2018年に再稼したのですが、なかなかご紹介いただけない状況が続いたため、積極的に営業をかけていくことになりました。この緩和ケア病棟の取り組みをきっかけとして、さらに前方連携に注力する体制を整えるため、2020年に渉外・広報課を設置しました。
また、2020年8月には施設の老朽化や南海トラフ巨大地震対策の一環として、宮崎市東部の沿岸から10㎞ほど西部の内陸地に移転建替しました。移転による地理的な影響により、会員からの患者紹介にも変化が生じたため、移転地周辺の会員の先生との新しい関係性を結構築する必要がありました。また、移転先後は高速道路インターチェンジにも近く、より広い医療圏にアクセスできるため、医療圏を越えた新しい前方連携の流れを形を作ることが急務でした。
訪問先に必要な情報が手土産。その考え方にハッとさせられる
――そんな課題感の中、『foro CRM』とはどのような形で出会いましたか?
先ほど述べたように、2019年から本格的に地域の会員医療機関を訪問するようにはなったものの、営業の素人である私たちでは、訪問したところで具体的に何をするべきなのか、全く判断できませんでした。営業活動の結果、紹介が増えているのかも分からずじまいで、ほとんど手ごたえをつかむことができていませんでした。
そんな折、済生会熊本病院様が『foro CRM』を導入したとの話を聞きつけ、職員がメダップさんにアプローチ。何度かの打ち合わせを経た中で、私たち自身、蓄積してきたつもりだった経験が、うまく生かされていないことに気付かされました。実際、訪問の記録といっても、ちょっとした出来事を各自がExcelでまとめていたレベルで、それ自体も全くと言っていいほど共有されていませんでした。メダップさんとの話し合いを経て、『foro CRM』を活用すればそうした点が根本的に改善できると確信し、2020年5月に導入が決定しました。
――最初はどんな取り組みからスタートしましたか?
まずはメダップさんから営業の基礎を学ぶところからスタート。アポイントメントの取り方といった初歩の初歩から始めました。さらには事前に訪問先の情報をまとめながら、面談したときに話すべきストーリーをあらかじめ構築していく「前外報」、話した内容を記録して次の訪問につなげていく「後外報」などの手法についても伝授してもらいました。おかげで“高い”と感じていた営業へのハードルが少しずつ低くなっていった感触を得ました。
印象的だったのは、ある職員が「手土産は何がいいですかね?」と質問したとき。メダップさんからは「手土産はいりません。訪問先に必要な情報こそが手土産です」と返していただいて、職員一同、ハッとさせられました。以降、訪問先にどんな情報を持っていくのか、職員たちが真剣になって考えていくようになった気がします。
――具体的な効果はありましたか?
病院はどうしてもIT活用等、古臭いところがある組織ですが、メダップさんの支援によって一般企業と同じマーケティングやCRMなどの手法を導入することができました。実際、『foro CRM』には活動記録がしっかりと残されており、職員各自が病院でどんな話をしてきたかがよく分かりますので、その結果を踏まえた次のアクションを自然と起こせるようになりました。自分たちの行動変容が実現できたことが一番の収穫だと思っています。
職員の営業手法が向上。さらなる成果を目指して地域に飛び出していく
――地域のクリニックからの反応はいかがですか?
かつては訪問をしても「何しに来たの?」と言われることもありましたが、訪問先の先生から望まれる情報を丁寧に提供することで、今では感謝の声を寄せていただける場面も増えてきました。また、渉外・広報課には車両係もあり、患者様に対して会員医療機関と当院間を車両で送迎するサービスを無料提供しているのですが、そのサービスの認知度も向上。今まで利用がなかった会員からも予約が入るようになりました。『foro CRM』を活用しながらフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを経て提案してきた賜物だと感じています。
広報活動を行った緩和ケア病棟は病床稼働率7割程度まで回復してきました。この状況にたどり着くまで、緩和ケア病棟の医師や師長と同行訪問するなど、3年の歳月を費やしましたが、ようやく今の状態にまで到達することができました。この経験を活かし、これからも営業・広報活動を通じて、会員の先生から必要とされる情報を発信し、前方連携を広げていきたいと思います。
――今後はどんな課題を解決していくお考えですか?
『foro CRM』導入1年目は文字通りの勉強の期間であり、そのおかげで部署内の職員の仕事は、格段に効率化しました。2年目となった今はそれを成果に結びつけるべく、過去に実績のなかった医療機関からの紹介を増やしたり、アンケート結果による会員満足度をさらに高めていくといったことを実現していきたいと思っています。
メダップさんからは「訪問は3回くらいしないと意味がない」ともアドバイスを貰っています。担当者の顔を覚えてもらって積極的にコミュニケーションを交わしていけるようになって初めて、蓄積してきたデータが活きてくるはず。足繁く訪問するためのネタ作りとして、ニュースレター制作などにも挑戦しており、旬な話題をいち早くお伝えしながら、よりいっそう地域の医療機関との距離を縮めていければと思っています。
――前方連携に悩む病院にアドバイスをお願いします。
医師会病院である当院では顕著でしたが、どうしても地域のクリニックに営業をかけるのに尻込みしてしまう病院も多いのではないでしょうか? しかし、今の時代、待ちのスタイルの病院経営では限界が生じるのも事実。実際、過去の私たちは新しい情報をきちんと会員である医療機関に伝えきれておらず、それが紹介件数の伸び悩みにつながっていることが、メダップさんとの付き合いで浮き彫りになりました。まずは、臆することなく訪問活動に注力していくべきだと思います。