日本赤十字社 福井赤十字病院様

地域医療を守る『架け橋』となり、共存共栄の未来へ

福井県福井市にある福井赤十字病院様では、地域の医療機関とのコミュニケーションにメールを活用されたり、地域の医療機関のエンゲージメント※1を測定するためにNPS※2調査を行うなど、「顔の見える関係づくり」をより効果的にするための活動をされています。このような活動の意図や目的について、地域医療連携課の青柳 芳重様(写真の左端)、枡谷 由佳理様(写真の右端)にお話しをお伺いしました。

※1 エンゲージメントとは、顧客(地域の開業医の先生方)がどれだけ企業やサービス提供者に対して継続的な愛着や信頼を持っているかを指します。
※2 NPSとは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略で、アメリカの戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーが考案した顧客エンゲージメントを測定するための指標です。

【背景】なぜ、地域医療連携に力を入れているのか?

まず、貴院の特徴を教えていただけますでしょうか。

青柳様:福井赤十字病院は、大正14年(1925年)に日本赤十字社福井支部病院として開院しまして、もうすぐ100周年を迎える病院になります。100年近くもの間、地域に根差した医療を提供し続けており、地域の基幹病院として高度急性期及び急性期医療を提供しています。4つの基幹病院が近隣にあり、福井赤十字病院は福井市南部に位置します。25の診療科を持つ534床の病院として、地域のニーズに広く応じるための体制を整えています。

貴院における地域医療連携課のミッションを教えてください。

青柳様:「地域医療連携医のニーズを優先し行動すること」を常に意識しています。地域医療連携の強化は病院の戦略テーマの一つであり、 地域に向けて自院の情報を適切に届けることが重要なミッションの一つとなっています。連携先医療機関の先生方からのご意見は、当院の医療の質を向上させるための貴重な情報ですので、クレームを含め連携医からのありのままのご意見を各診療科に伝達するようにしています。苦情や厳しいご意見も診療科部長や幹部へその都度報告し、その報告に対して院内の先生方自身に今後の対応を検討してもらっています。

また、戦略的に新しい患者さんの紹介数を増やすのは地域医療連携課の使命であり、地域医療連携課が中心となり実践すべきことと思っています。福井赤十字病院の強みを地域の医療機関の先生方に知っていただくために、顔の見える訪問活動だけでなく、効率的な情報発信の手段としてメールの活用も積極的に行っています。

図1-福井赤十字病院 外観

図1:福井赤十字病院様 外観

【導入前】当時抱えていた課題は何だったのか?

2021年4月にforo CRMを導入いただきましたが、当時どのような課題をお持ちだったのか教えていただけますでしょうか?

青柳様:当院は近隣病院と比べると、訪問活動の質と量のいずれも遅れを取っているように思えました。赤十字としてのブランドや、100年近く地域に根差した医療を提供している自負はありましたが、もっとできることがたくさんあるのではと。

当時も訪問活動は行っていましたが、Excelに情報を入力するだけで振り返りもほとんどできていませんでした。また、各データファイルがばらばらに存在していたこともあり、データという「宝」はあるにもかかわらず活かしきれていませんでした。紹介件数の管理はしていても、訪問先の選定や訪問時のストーリーの組み立てにデータを生かせずにいたので、場当たり的な活動になっていたと思います。

枡谷様:訪問時に新しい診療内容やセミナーのお知らせを伝えても、当時はなかなか手応えを感じられませんでした。掘り下げた質問ができないために、お知らせを伝えるだけで終わってしまい、結果としてごあいさつ程度の訪問になってしまっていました。

青柳様:広報誌、セミナー、訪問活動などの様々な手段を講じていましたが、これらの活動が紹介にどれだけつながっているかの成果測定が不十分で、組織として成長できない状態でした。ただ、膨大なデータ量をExcelで管理して、手作業で更新していくのは当院の体制では到底無理でした。そんな時に、タイミングよくメダップさんからお話しをいただきました。

【導入後】どのようにして課題を解決していったのか?

foro CRMを導入してどんな変化がありましたか?

青柳様:いくつかありますが、まずは営業のノウハウを身に付けることができたのが大きいと思っています。訪問時の話すべきストーリーを仮説・構築していく「前外報」、話した内容を記録して次の訪問につなげる「後外報」という手法は各メンバーが意識を持って取り組めるようになってきていて、地域の医療機関の先生方との関係性を高めるための最低限の体制は整ったと思います。また、foro CRMが訪問後の効果測定、紹介数の推移などを更新・見える化するなどのアシスタントの役割を担ってくれるので、foro CRMは第三の営業担当だと思っています。

枡谷様:訪問活動への自信は付いてきたと思います。聞きたいと思うことは事前に仮説を立てて訪問するようにしているのですが、先生方に嫌がられることは滅多にありません。先生方は話したくても話せなかっただけで、私たちが過去の面談履歴やデータに基づいて質問していなかったことに問題があったのだと思います。地域の医療機関の先生方から引き出した情報は、当院の医療の質を向上させることにもつながるようになってきていて、訪問に対するモチベーションは格段に上がっています。


図2:foro CRMへの前外報、後外報の入力例

活動で工夫されている点を教えてください。まず、メールでの情報発信について気づいたことや得られた成果を教えてください。

青柳様:当院でも広報誌を郵送で送っていましたが、実際に読んでいただいたのか分からないことが課題でした。その点、foro CRMからメールを配信すると、どの先生がメールを開封したか、リンク(URL)をクリックしたかを把握することができるので、郵送よりも効果測定がしやすいので使い勝手が良いと感じています。当院ではforo CRMの導入前からメールアドレスの収集・登録を進めていたので、メールでの情報発信に抵抗感のようなものは特にありませんでした。なお、広報誌を紙で読みたい先生方が一定数いらっしゃいますので、広報誌の郵送は継続しています。


図3:foro CRMのメール配信機能で毎月メール配信を実施

次に、NPS調査について教えていただけますでしょうか。

青柳様:当院では体制上、訪問活動を中心に動ける要員がいないため、訪問する目的と対象とする医療機関の選別が重要と考えています。その一環として、NPS調査(図4)という手法でどれだけ地域の医療機関から信頼されているかの見える化を行っています。その中で、中立者から推奨者への移行を促し、推奨者の数を増やすことを目標に掲げています(図5)。foro CRMで批判者・中立者・推奨者の医療機関を確認できるようにしていて、訪問前の事前準備の際にNPSの結果を合わせて確認するようにしています。

NPS調査を行ったことで、2つの傾向があることに気づきました。

 1.福井市より隣接地区の方がNPSスコアが高い
 2.紹介数が多いほどNPSスコアが高い

一方、個別の結果を見ていくと、信頼関係が出来ていると思っていた医療機関からの評価が思ったよりも低いこともあり、「紹介を多くもらっている=推奨者」とは限らないということも分かりました。コミュニケーションする機会が多いからこそ、何らかのご意見をお持ちなのだと考えています。そういった率直なご意見を伺い、院内でフィードバックをすることで当院の成長につながり、地域全体の医療の質が向上すると考えています。地域医療連携課が「架け橋」としての役割を担えるよう、効率的かつ確実な地域連携活動をこれからも追求していきたいと思っています。

図4-NPSとは

図4:NPSとは

 

図5-NPSの測定方法-png

図5:NPSの測定方法

【今後の展望】今後は何を目指していくのか?

foro CRMについて、今後期待していることはございますか?

青柳様:導入してからも機能改善が進んでいて、かなり充実してきたと思います。ただ、当院の場合は新たな機能を使いこなせるようになるための時間が中々取りづらいので、機能を豊富にするよりもシンプルな構成にしていただきたいなと思っています。

枡谷様:私たちは他の業務をしながら訪問活動をしているので、foro CRMを一日中使っているわけではありません。いざ使うタイミングになった際に、ストレスなく情報を検索できたり、期日が迫ってきたタスクを自動で通知したりなど、アシスタントとしての機能を強化していただきたいと思っています。

青柳様:当院の地域連携活動はforo CRMありきで動いていますし、第三の営業担当だと思っています。第三の営業担当としてのスキルアップを今後期待しています。

貴重なご意見ありがとうございます。最後に今後取り組みたいことを教えてください。

青柳様:いまは誰が訪問しても関係性を強められる体制・ノウハウがある程度は整ったと思っています。今後は、さらに地域医療連携を強化するために、訪問活動できる要員を育て、体制を整えていくことを検討しています。医療機関ごと、もしくはエリアごとに訪問活動を行う担当者を割り振り、長期的な関係構築を通して顧客(地域の医療機関)への理解度をさらに深められる体制にしたいと考えています。

foro CRMを導入して訪問の質は随分成長できた実感ありますが、現体制では訪問に割ける時間の確保が厳しい現状もあります。そんな中で、ターゲットを厳選し適切なタイミングで訪問することが更なる質の向上につながると考え、引き続き課題の克服に向けて院内で検討していきたいと考えています。